
翔ける司法書士事務所
代表 中村 翔太郎
司法書士試験に合格し、実務経験を積んだのち、2024年に独立し「翔ける司法書士事務所」を設立。
現在は創業期のスタートアップから、成長期の資金調達、そして、事業継承・解散まで、経営者のパートナーとして、会社の「はじめ」から「おわり」までトータルでサポートを行なっている。
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[スタートアップ支援]
スタートアップが成長する過程で必要な投資家やVCからの資金調達。その際に必要となるのが「投資契約書」です。投資契約書は単なる形式的な書類ではなく、企業の将来を左右する重要な書類です。
本記事では、投資契約書の投資契約書の基本的な構成と重要な条項、注意すべきポイント、そして実際に起こり得るトラブル事例について詳しく解説します。
目次
投資契約書は、スタートアップと投資家の間で締結される契約書で、資金提供の条件や両者の権利・義務を明確にする書類です。スタートアップにとっては成長のための資金を得るとともに適切にリスクを管理するための手段となります。
そのため、単なる形式的な書類と考えるのではなく、自社の未来を守るための戦略的なツールとして位置づけることが重要です。
スタートアップは成長過程でさまざまな資金調達の機会に直面しますが、投資契約書の内容次第で、その後の経営戦略や資金調達の自由度が大きく左右されます。
例えば、投資家が過剰な経営権を要求する条項が含まれている場合、創業者自身の意思決定が制限され、会社のビジョンが実現しづらくなることもあります。
また、不十分な契約書は将来的な法的リスクの温床となり、不要な訴訟や紛争に発展する可能性もあります。このようなリスクを回避するためにも、投資契約書は慎重に作成・確認する必要があります。
当然ながら投資家が提供する資金の額とそれに見合う株式の放出比率は重要です。出資額が大きいほど投資家の影響力が増すのは当然ですが、スタートアップの経営者としては、出資比率が過剰に偏ることで経営権のコントロールを失わないよう注意が必要です。
特に資金調達に慣れていない場合、初期段階で少額の資金でも大きな株式割合を渡してしまうケースが多く、後の資金調達時に不利になることがあります。
表明保証条項は、スタートアップが自社の状況について正確な情報を提供することを保証するものです。具体的には、財務状況、法的問題の有無、知的財産権の保有状況などを開示する必要があります。万が一、虚偽の情報や重要な事実の隠蔽が発覚した場合、投資家から損害賠償請求を受けるリスクが生じます。このため、表明保証をする条項を最低限に絞る交渉をするなど慎重に対応しましょう。
株式買取請求権は、投資家が特定の条件下で自分の保有株式をスタートアップ側に買い取らせる権利です。これは投資契約の表明保証条項に違反していた場合などにおける投資家にとってのリスク回避の手段ですが、スタートアップ側としては、表明保証の内容が厳格すぎないよう、契約条件を細かく調整することが重要です。
特に経営が厳しい状況でこの権利が行使された場合、資金繰りに大きな影響を与えることになります。
取締役指名権は、投資家がスタートアップの取締役を指名する権利です。取締役を通じて、投資家が企業の経営に直接関与することができるため、企業にとっては経営の独立性を失うリスクがあります。過剰な介入を防ぐためにも、指名権の範囲や条件について明確にしておき、投資家と透明性のあるコミュニケーションを心がけましょう。
優先買取権(先買権)とは、投資契約の当事者である株主(例えば経営株主)が保有する株式を第三者に譲渡しようとする際に、他の当事者(例えば投資家)が同一条件でその株式を優先的に買い取ることができる権利を指します。この条項は、スタートアップの経営権や株式構成が外部の予期せぬ第三者に渡ることを防ぐことを目的にしています。
希薄化防止条項とは、投資家が自分の持株比率を希薄化(減少)させないための規定です。具体的には、会社が新たな株式を発行する際に、既存の投資家がその持株比率を維持することを保障します。これにより投資家は、新たな出資者によって自分の持株比率の減少を防ぐことができます。投資家が会社の経営に影響力を持ち続けることを望む場合に特に重要な保護措置となります。
スタートアップが投資契約を締結する際の主な対策は以下のものが挙げられます。
投資契約書は法的な専門知識が必要となるため、弁護士や司法書士などの法務の専門家の助言を受けることが不可欠です。特に表明保証条項や株式買取請求権などの複雑な条項は、誤った解釈をすると将来的な法的リスクに繋がります。
契約書の作成や交渉の際には、必ず専門家に内容を確認してもらいましょう。
スタートアップが資金を調達する際、過剰な出資比率を投資家に与えることは避けるべきです。出資比率が高すぎると、経営権を失い、企業のビジョンや戦略が制約されるリスクがあります。取締役指名権や議決権の範囲についても、創業者が一定のコントロールを保持できるよう慎重に調整することが重要です。
現在の資金調達だけでなく、将来の資金調達や事業拡大に影響を与える条項にも注意を払う必要があります。例えば、希薄化防止条項や優先株の権利が厳しすぎると、新たな投資家の参入が難しくなります。短期的な資金の確保だけでなく、企業の成長に柔軟性を持たせる契約内容を心がけましょう。
本記事では、スタートアップにおける投資契約書の重要性について解説しました。投資契約書は単なる形式的な文書ではなく、企業の将来に大きな影響を与える重要な契約です。そのため、契約内容を十分に理解し、注意深く交渉することが大切です。
特に、出資額と出資比率、表明保証条項、株式買取請求権、取締役指名権などの重要な条項については、スタートアップ側にとって不利な条件になりすぎないよう慎重に対応する必要があります。
また、経営権の喪失や法的リスク、資金繰りの悪化などのリスクを避けるためにも、専門家の助言を受けながら契約書を作成・確認することが重要です。
スタートアップにとって、投資契約は成長の大きなチャンスとなる一方で、慎重な判断が求められます。適切な知識を持ち、専門家の知見を借りながら戦略的に交渉することで長期的な成功を目指しましょう。
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